高校生からの問い合わせ
最近、会社の問い合わせフォームから高校生による連絡がいくつか連続して届くという、少し珍しい出来事がありました。
普段、私たちのようなスタートアップには日々多くのお問い合わせをいただきます。
正直なところ、すべてに丁寧に対応する余裕はなく、中には営業メールのようなノイズも含まれているのが実情です。
しかし、高校生がこのようなニッチなスタートアップや、私の経歴に強い関心を抱いて連絡をくれるということ自体が非常に珍しく、また素直に嬉しくもありました。
私自身の高校時代を振り返ると、ラグビーに明け暮れる毎日で、社会との接点を持つことなど考えもしませんでした。
それ故に、「なぜ彼らは連絡をくれたのか?」「どんな意図で話したいと思ったのか?」と純粋な興味が湧き、一度お話させていただくことにしました。
「何者かになりたい」
実際に話をしてみると、彼らの視座の高さに驚かされました。
ある学生は、「自分で事業を興してみたが、小売業向けに浸透させるにはどうしたら10Xのように急激にスケールできるのか」と具体的な戦略を問い、またある学生は「NewsPicksの動画で10Xを知り、自分自身が何をしたいのかモヤモヤしていて、ぜひ話してみたい、と問い合わせた」と語ってくれました。
どちらも、シンプルにすごい。
特に印象に残ったのは、後者の「何を目指すべきか」と問いかけてきた学生との対話でした。
彼はSNSを通じて同世代の起業家の活躍を目にし (10代で起業が普通の時代!?)、自分と彼らを比べて強い劣等感を感じているといいます。
彼には、「それは若さ故のとても正当な焦りであり、大事な感情だ」と伝えました。
一方で、その焦りをすぐに発散せず、心のどこかに溜めておくことが大事だと話しました。
ある一時点を切り取って誰かと自分を比べ、勝った負けたと一喜一憂するのは「点」の話でしかありません。
人には必ず凹凸があります。自分の苦手なことは誰かの得意なことであり、その逆もまた然りです。
若いうちは、たくさん焦っていい。その焦りこそが原動力となり、「いろんなものを試してみよう」「一歩踏み出してみよう」というアクションに繋がるからです。
ここで最も大事なのは、その一回一回でちゃんと全力を出してみることだと思っています。
全力を出し切ったときの結果を見て初めて、それが自分にとっての強みなのか弱みなのか、好きなのか嫌いなのかが分かります。中途半端な試行錯誤では、自分という人間の輪郭は見えてきません。
機会を手繰り寄せる
そうやって全力を尽くした試行錯誤を繰り返していると、どこかのタイミングで「自分の好き」と「自分の得意」が重なり、さらにそれが社会から求められる機会と出会える「かも」しれない。
私の同世代を見渡しても、そんな幸せな機会に出会えている大人は決して多くはありません。運の要素も大きいでしょう。
出会いの確率を上げる方法は一つしかありません。一歩踏み出す回数を増やし、毎回全力を出すこと。
たくさん試して、転んだり傷ついたりすればいいのです。今とは違う位置に自分を運んだとき、自分から見える・感じる景色は確実に変わります。
周囲の人々や、彼らから自分への影響(インフルエンス)も変わる。「環境」が変わるのです。
環境が変われば、次に訪れる機会も変わっていきます。
これを愚直に繰り返して、やっと自分にピッタリの「場所」「機会」「事業」と出会えるかもしれない。そんな話をさせてもらいました。
道を見つける
振り返れば、私自身が「この道で行こう」と腹を括れたタイミングは決して早くありませんでした。20代後半だったと思います。
商社からキャリアをスタートし、復興支援のNPOへ転職。その後、Google社とのプロジェクトを通じて「ソフトウェアプロダクトには世の中を大きく変える力がある」と肌で実感したことが大きなきっかけとなりました。そこからさらに数年が経ち、自分のリスクで事業をしようと10Xを創業したのです。
創業後もなかなか「自分の事業」と出会えている感覚は薄かったです。やっと出会えた「Stailer」という事業も、きっかけはある顧客との出逢い、そのタイミングでしか成立しない案件でした。
とても計算して実現できたものではありません。再現性はゼロです。
何かしらの準備はしていたものの、急に開いた窓に飛び込んだら、その先に自分の道だと思えるものが続いた (続けられた)、というラッキーパンチでした。
父として
私には父親としての成分も (かなり濃いめに) あります。できることならば、自分の子どもたちには、細くとも自分にピッタリの道を見つけてほしいと願っています。
ただ、それが大きな運に左右されるものであり、見つけようとする営み自体が大変なこともよく理解しています。
親として導くことは難しく、彼らが自ら努力し、その努力の結果として道が見つけられることを願うことしかできません。
今回連絡をくれた高校生たちに対しても、自分の子どもに対するのと同じような気持ちで対話をさせていただきました。
今の焦りやモヤモヤを大切に、まずは目の前のことに全力で一歩を踏み出してみてほしい。
その意欲やエネルギー自体が、歳を取るにつれて低減していく貴重な資産なのです。
迷うことも、とりあえずやってみることもすべてがこの世代の特権。力のかぎり楽しんでほしい。
そう思っています。
